昨今、コロナウイルスの影響で多くの人が職を失う甚大な状況に陥っています。
以前の記事ではコロナ解雇・雇い止めが8万人を突破したことを書きましたが、そのうちの半数近くを非正規雇用者が占めていました。
今後はますます非正規雇用者を中心に、解雇や雇い止めが増えると言われています。経済が悪化した時に切られるのは、きまって立場の弱い人たちだからです。
そこで今回は、いまだ日本の根深い問題となっている非正規雇用について(やや怒り気味で)書いていきたいと思います。
それではいきましょう。
非正規雇用とは
非正規雇用とは雇用契約の一種で、アルバイトやパートタイマー、派遣社員、契約社員のように、一定期間のみの雇用契約に限定して働くことを指します。
日本では正社員と比べて、以下のような特徴が挙げられます。
1.給与が少ない、退職金や賞与(ボーナス)の支給がない(支給されるとしても正社員より要件が厳しいうえ、より少額になる)
2.雇用が不安定 – 例:終身雇用のない、有期雇用で最長でも3年程度しかない。
3.キャリア形成の仕組みが整備されていない – 例:幹部までの昇進・昇級の人事系統に乗っていない、能力開発の機会に乏しく、いくら就労を重ねても知識・技能・技術が蓄積されない。
Wikipediaより参照
全体的な数の推移では、1984年が604万人だったところ、2017年には2036万人に達しており、労働人口に占める比率も15.3%から37.3%もの増加で、現代ではほぼ40%弱の人が非正規で働いているという状況です。(厚生労働省より参照)
よく就職氷河期や共働き世帯の増加などが要因として挙げられますが、冒頭にも書いた通り、経済状況が悪化した時にこうした雇用が守られていない人たちが真っ先に解雇の対象となります。
日本では非正規雇用者への偏見が根深く残っており、昨年〜今年にかけて施行されている「同一賃金同一労働」(パートタイム・有期雇用労働法)も浸透するにはまだまだ時間がかかるでしょう。
では今回の肝となる、海外との比較に移っていきます。
海外の非正規雇用の実情
そもそも欧米諸国では「ジョブ型」の労働形態が採用されているため、仕事に対して人が割り当てられるという雇用の形で、仕事内容は明確に決められています。
そのため、自身のキャリアアップのために転職をすることが当たり前なので、人材の流動性が高いと言われています。
するとどうなるか。
なんと、正社員より契約社員のほうがスペシャリストとして重宝されているんですよね。
実際に欧州諸国では、「非正規社員の賃金は正社員よりも高くて当たり前」が常識です。
日本と真逆の概念で驚くかもしれません。
たとえばアメリカは正社員と非正社員の区別がなく、いわゆるパートタイムとフルタイムの違いしかありません。
フランスでは派遣労働者や有期労働者は「企業が必要な時だけ雇用できる」というメリットを企業に与えているとの認識から、非正規雇用には不安定雇用手当があり、正社員よりも1割程度高い賃金が支払われています。
またイタリアやデンマーク、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどでも、非正規労働者の賃金の方が正社員よりも高くなっています。
本来「同一賃金・同一労働」の考えに基づけば、解雇によるリスクを補うには、非正規労働者の賃金が高くなって当然なんです。
にもかかわらず、日本では正社員と同じ仕事内容でも待遇面で劣ってヨシ!という愚劣極まりない常識が根強く蔓延っています。
あん?おかしくねーかこの国?
最後に政治の話
「400万人を超える(新たな)雇用をつくり出し、働き方改革や一億総活躍社会に向けて大きく一歩踏み出すことができた」
これは昨年8月末の辞任表明の記者会見で安倍晋三前首相がアベノミクスの下での雇用増の実績を強調した有名なフレーズです。
しかし実際は増加した雇用者数475万人の53%に当たる249万人は派遣社員やパートといった非正規雇用者だったんですよね。また2012年1月から2020年1月に増加した雇用者数では、その割合は66%に及ぶそうです。
あとは言わずもがな、ですよね?
それでは、素敵な転職ライフを!